Une vie / Guy de Maupassant
女の一生(14)
Une vie (14)
——————————【14】———————————————
Sa grande force et sa grande faiblesse, c' était la
bonté, une bonté qui n' avait pas assez de bras
pour caresser, pour donner, pour étreindre, une bonté
de créateur, éparse, sans résistance, comme l' engour-
dissement d' un nerf de la volonté, une lacune dans
l' énergie, presque un vice.
.——————————《訳》————————————————
彼の最大の長所であり、また同時に最大の欠点と言え
るのが、その善良さでありました.その善良さゆえに、
弱きものを愛撫する腕が足らず、貧しきものに与える腕
がたらず、哀しき者を抱きしめる腕が十分には足らない
のでありました.その目指す善良さは創造主、神の善良
さであったが、ばらばらもののであり、忍耐力のないも
のであり、まるで意志が神経麻痺を起こした状態だった.
それは気力が欠落しており、もう悪徳といえるほどの善
良さであった.
——————————〘語句〙———————————————
force:(m) 力、強さ、強み、長所
faiblesse:(f) 弱さ、(人の) 弱点、欠点
bonté:(f) 善意、親切、善良さ
bras:(m) 腕
étreindre:[エトラーンドル](他)抱き締める
créateur(_trice):(名) 創造主、創立者、発明者
épars(e):(形) 散らばった、散在する、脈絡のない
résistance:(f) 抵抗; sans résistance / 難なく
engourdissement:[アングルディスマン](m) しびれ、麻痺
nerf:[ネール](m) 神経、
volonté:(f) 意志、意欲
lacune:[ラキュン](f) 空隙、空白、欠落、脱落、欠陥
énergie:[エネルジ](f) ① 力、精力、活力、気力
② エネルギー
presque:(副) ほとんど、ほぼ
vice:(m) 悪習、悪癖、②(物の)不備、欠陥
——————————≪感想≫—————————————————
名詞の羅列で、そのまま訳したのでは意味不明です.
フランス語は名詞の中にもまた言外にも文章がありま
す.それは日本語の四字熟語が文章的意味を持ち合わ
せていることに似ています.なので、名詞は解凍して、
「てにをは」をつけて文章を取出す必要があります.
たとえばdonner 与えるというのには、与える相手は恵
まれない人に、という言外の意味も含んでいます.こ
れをまるで電子レンジで解凍するようにして取出しま
す.