語学学習日記(フランス語学習)『女の一生』   (13)

Une vie  /   Guy de Maupassant

女の一生(13)
Une vie (13)

 

——————————【13】———————————————

 Aristocrate  de  naissance,  il  haïssait  par  instinct  quatre-
vingt- treize; mais,  philosophe  par  tempérament  et  libéral
par  éducation,  il  exécrait  la  tyrannie  d' une  haine  inoffen-
sive  et  déclamatoire.
  
            
.——————————《訳》————————————————

  生まれが貴族ということもあり、彼は本能的に93年
を恨んでいた.しかし気質が哲学者だったのと、受けた
教育が自由主義派の教育だったこともあり、彼は専制
治を忌み嫌っていた.もっともその忌み嫌い方は、毒に
も薬にもならない、ただ雄弁な語り口調だけのものだっ
たのだが.
   

——————————〘語句〙———————————————
              
aristocrate:(名) 貴族        
haïssait:(半過去3単) < haïr [アイール] (他)
       憎む、嫌う、恨む
aristocrate de naissance:名詞句ではあるが、直後に主語
   代名詞のil があるので、副詞句として機能して
      いる.すなわち、étant が脱落した分詞節と見る
      のがいいと思います.前置詞 de は「~に関しては」
   「うまれに関しては」étant あるいはcomme il était 
      を補って「貴族ということもあり」という理由を
   述べる    
instinct:[アンスタン](m) 本能、直観
    英文科の方は発音注意[インスティンクト]ではありません.
par instinct:本能的に
quatre-vingt-treize:93年とは1793年に始まった恐怖政治
    のことで、貴族の特権の多くが廃止された.
philosophe:[フィロゾフ](名) 哲学者  
philosophe par tempérament:同じく名詞句ではあるが、
    主語代名詞 il の説明をする動詞脱落の分詞節.
    「気質的には哲学者なので」
        「気質は哲学者の彼は」とil に付けた訳も可.   
libéral(ale):自由主義者(名)   
exécrait:(半過去3単) < exécrer [エグゼクレ](他)[文]
     憎悪する、忌み嫌う   
tyrannie:(f) 専制君主制、暴政、圧政     
†haine:[エヌ](形) 憎しみ、嫌悪   
inoffensif(ive):[イノファンスィフ,スィヴ] (形) 無害の、罪のない
    安全な    
déclamatoire:(形) 美辞麗句ばかりの、大仰な雄弁調の


—————————≪読解力アップへ≫———————————————

il exécrait la tyrannie. / 彼は暴政を忌み嫌った.
これだけなら、文法学びたての人でも訳せます.
しかし「おまけ」がついています.
 d'une haine inoffensive et déclamatoire.
 d'une のde を「~の」とやってしまうとわけがわから
なくなります.このde は「方法」「道具」の de です.
「彼は暴政を忌み嫌った.」で、どういうやり方でかと
いうと、d'une haine inoffensive / 当たり障りのないやり
方で嫌っていた. et déclamatoire / 仰々しい言葉を並べ
るだけのやり方だった. 

ということで、仮に試験問題で下線部を訳せ、という設
題が下記のようにあれば、これで訳せますよね.
il exécrait la tyrannie d'une haine inoffensive et déclamatoire.
彼は専制政治を忌み嫌ってはいたが、罪のない口先だけ
が大げさな憎悪にすぎなかった.

よもや、「彼は罪のない美辞麗句の憎悪の専制政治
忌み嫌った」などとしませんでしたよね.コンピュータ
ならそうするかも.
【確認】de は「~という方法で、~というやり方で」