語学学習日記(フランス語学習)ハリエット嬢(78)


ハリエット嬢(78)
Miss Harriet
Maupassant


—————————【78】——————————————

  Je  rougis,   ma foi,   plus  ému  par  ce  compliment  
que   s' il   fût  venu  d' une   reine.    J' étais   séduit,
conquis,   vaincu.    Je   l' aurais   embrassée,   parole
d' honneur ! 
 
 
..—————————《訳》———————————————
      
 私は王妃様から賜った賛辞だったとしても、それよりも、
このハリエット姉さんの賛辞の方がもっと感激的でしたし、
本当に顔が火照ったのでした.私は魅了され、征服され、
打ち負かされたのでした.この賛辞が仮に人の姿を取って
いたなら、私はその人に接吻していたことでしょう」
 
     
 
.—————————〘語句〙——————————————
         
rougis:(単純過去1単) 
   <rougir (自) (顔が)赤くなる、赤面する       
ma foi:そうだ、確かに、本当に     
ému(e):(形) 心を動かされた、感動した;
    être ému / 心を動かす、感動する
  se sentir ému / 心を動かす、感動する
  <émouvoir (他) 感動させる               
compliment:(m) 賛辞、挨拶、お世辞、祝辞  
fût venu d' une reine:王妃様から来たとしても    
j'étais séduit:私は魅了されていた(受動態半過去)
  <seduire (他)(人の心を)ひきつける、魅了する
  Sa beauté a séduit plus d'un homme. / 彼女の美貌
  に魅せられた男は1人や2人ではない.
 *) 受動態は形態が複合過去や大過去と似ている
   ので注意しましょう.être + 過去分詞=受動態 
conquis:(過去分詞)
  <conquérir (他) 征服する、支配する   
vaincu(e):(形、過去分詞) 打ち破られた、征服された
  <vaincre (他) 打ち破る、打ち負かす
  ② (人の心を)つかむ、魅了する   
je l'aurais embrassée:私はそれに口づけていただろう   
parole d'honneur:誉あふれる言葉 
je l'aurais embrassée, parole d'honneur:私はこの賛辞
  に接吻をしていただろう.
  条件文が欠落した条件法ですが、条件部分は、「こ
の言葉が生き物なら」つまり、「この賛辞が仮に人の
姿を取っていたなら、私はその人に接吻していたこと
でしょう」
 となります. 


—————————≪解釈≫——————————————

今回もいきなり、難解な文構造で始まりました.単語が
すべてわかったところで、この文を理解するにはまだ少
々意味の把握までには至りませんでした.
Je rougis, ma foi, plus ému par ce compliment que s'il fût venu
d'une reine.  
まず、ému が plus ....que で修飾されていますよね.    que
以下が曲者で接続法大過去が使われています.plus ému と
いう比較級の比較対象がsi 以下の条件節で語られています.
つまり、この接続法大過去は条件法過去第2形というわけ
です.そして条件法過去第2形は、直説法大過去に置換え
が可能ですので、こうなります.
Je rougis, ma foi, plus ému par ce compliment que s'il était venu
d'une reine.
私は王妃様から賜ったよりも、この賛辞で感激し、本当に
顔が火照ったのでした.

日本語に直してもまだ、わけがわからない文章ですので、
この文が何を言いたいのか、あらためて検討しますと
「この賛辞がたとえ王妃様から受け取ったとしても、尚
それ以上に感激した」ということでしょうから、
その真意はこうです.
「ハリエット姉さんから受け取ったこの賛辞ほど私を感
激させたものはなかった.たとえそれが王妃さまから賜
った言葉だったとしてもです」

ではこれを今度はフランス語にしてみましょう.
Aucaun mot ne m'a fait plus ému que le compliment
par Miss Harriet.  Plus ému que s'il était venu d'une
reine.

なので本文
Je rougis, ma foi, plus ému par ce compliment que s'il 
fût venu d'une reine.  

Je rougis, ma foi. Aucaun mot ne m'a fait plus ému que 
le compliment par Miss Harriet.  Plus ému que s'il était 
venu d'une reine.
ですね.


—————————≪文法≫——————————————

rougir は第二群規則動詞です.
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....直現:rougis.............rougis...........rougit....
................rougissons.....rougissez.....rougissent
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....単過:rougis............rougis...........rougit....
................rougîmes.......rougîtes.......rougirent
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半過去:rougissais......rougissais.......rougissait
.................rougissions....rougissiez......rougissaient
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    本文では単純過去なので、みるみる赤くなって
 行ったようです.半過去なら、そのままずっと
 赤面状態が続いていただけで、あまり面白くな
 かったかも知れませんね.