語学学習日記(フランス語学習)ハリエット嬢(45)

 
ハリエット嬢(45)


—————————【45】——————————————

 Au  bout  de  trois  jours  j' en  savais  sur  elle  aussi
long  que  Mᵐᵉ Lecacheur  elle-même.
  Elle   s' appelait   miss   Harriet.     Cherchant    un 
village  perdu   pour   y   passer   l' été,    elle  s' était   
arrêtée  à  Bénouville, six  semaines  auparavant,  et  ne
semblait  point  disposée  à  s'en  aller. 


——————————(訳)————————————————

 3日後には、彼女のことについては、女将のマダム・
カシュールに引けを取らないほど、この奇妙な女性の
ことを知るようになりました.
 彼女はハリエット嬢という名だった.夏は人里離れた
村で過ごそうと、探しながら、6週間前、ベヌーヴィル
に立ち寄ったきり、さっぱり出て行く気配がないような
のでした.


.—————————《語句》———————————————
           
au bout de ~ :~の終わりに、後に
   au bout de mois / 月の終わりに 
      au bout de quelques instants / 数分後に、間もなく
      au bout de trois jours / 3日後に         
long:(副) 詳しく、たくさん
aussi long que ~ :~とおなじぐらい詳しく
perdu:(形) 失われた、
   À la recherche du temps perdu / 失われた時を求めて
   perdu には「人里離れた」、「辺鄙な」という意味
   もあります.
   village perdu des Alpes / アルプスの寒村
   pays perdu / 辺鄙な地方、片田舎       
s'est arrêtée:(複合過去女性) <s'arrêter (pr)
      立ち止まる、立ち寄る
   s'arrêter dans un café pour prendre un verre.
      一杯やるために、カフェに立ち寄る.       
auparavant:(副) その前に
   un mois auparavant / ひと月前に      
disposée:(形、女性) <être disposé à + 不定
   ~する気になっている 
ne + 動詞 + point :さっぱり~ない
ne semblait point disposée à s'en aller:(彼女は)
    さっぱり出て行く気配がなかった


    

.—————————≪不明点≫——————————————— 

今回は私の語学力不足により、不明点が残りました.
1行目en ですが、これが不明点.なにしろ独学なもので
調べた辞書にも文法書にも解説は見つかりませんでした.
それで、仕方がないので我が「勘ピューター」で書きま
すと:
en は謎の女 [cette vieille originale] を指していると思います.
en は基本的には [de + 名詞] なので、ここではde + この謎
の女(奇妙な老女=cette vieille originale)のこと.

ここで気になるのは、すぐ後にsur elle があるのに冗長ではな
いのかという点ですがelle は「すでに知っている彼女」で、
de のあとは[正体不明の人物]が入っています.elle は誰だか
わからない人物には使えないからです.つまりd'elle が使え
ないということです.だから補充のためsur elle を置いたの
でしょう.
aussi long que Mᵐᵉ Lecacheur savait de cette vieille originale
のde cette vieille originale がen になって je savais に割
り込んで来ているのではないかと思います.

elle が「正体不明の者」には使えない、ということは、たと
えば、
Qui est-ce ? という問いに、Elle est Jeanne. という答え方は
できないのです.誰か正体不明の人をいう場合は、c'est 
を用いて、C'est Jeanne.とします.

人を定義づけるとき、つまり同定するときはc'est ~
であって、elle は使えません.

Qui est-ce ? と聞かれて
C'est Jeanne. と答えても、まだわからないときは
Qui est Jeanne ? とたたみかけて聞いてくるかも知れません.
このときでも、Elle est ma mère. とは言えません.
C'est ma mère. になります.   
これで相手が納得したら、相手は Elle est superbe, ton mère.
(すっげえ、いかすじゃん、君のお母さん) 
と、ここで始めてelle が使えます.superbe は正体を明かす
語ではなく、その人の属性を示すものだからです.

elle やil は定冠詞と違って、二度目だから使える、という
ものではなく、国籍、身分、職業など、その人物の正体
を説明するときは、Il est ~ もElle est も使えず、C'est  un(e) ~
と説明します.

『フランス語ライブ教室』(駿河台出版社)によると、
この段は、こう説明されています.

(1)Qui est-ce ? 「それは誰?」
(2)C'est Pierre, 「(それは) ピエールだよ」
(3)Il est beau ! 「(彼は)ハンサムねえ!」
(4)C'est un étudiant.「(彼は)学生なんだ」

(2)は正体説明(同定文)なのでc'est が使われ、
(3)ハンサムとか背が高いなどは属性なので
   il が使われます.
(4)は再び正体説明(同定文)なのでc'est を
   用いています.