Une vie / Guy de Maupassant
女の一生(53)
Une vie (53)
——————————【53】———————————————
Sa tête, soulevée à chaque aspiration, retombait
ensuite; les joues s' enflaient, tandis qu' entre ses
lèvres entrouvertes passait un ronflement sonore. Son
mari se pencha vers elle, et posa doucement, dans
ses mains croisées sur l' ampleur de son ventre, un
petit portefeuille en cuir.
..——————————《訳》——————————————————
夫人の顔は息を吸うごとに持ち上がり、そしてまた
コクリと落ちていきました. わずかに開いた唇からよ
く響くいびきが通過しているその一方で、頬はよく膨ら
んでいました.彼女の夫は彼女の方に身をかがめて
やさしく組んだ両手の中に小さな皮の書類入れをそっと
広いお腹の上に載せた.
——————————〘語句〙———————————————
soulevée:(p.passé) < soulever (他) 持ち上げる
aspiration:(f) 願望、あこがれ;②息を吸うこと
retombait:(3単半過去) <retomber (自) 再び落ちる、
垂れ下がる
s'enflaient:(3複半過去) < s'enfler ふくれる、増す、
大きくなる
enfler:(他) 腫れあがらせる、ふくらませる
tandis que:[同時]~する間に;
[対立]~であるのに、しかるに一方
lèvre:(f) くちびる;(2つあるので複数で用いる)
embrasser sur les lèvres / くちびるにキスをする
entrouvert(e):(形p.passé) 半ば開いた
< entrouvrir (他) わずかに開く、細目に開ける
passait:(3単半過去) <passer (自) 通る、通過する
(他) 過ごす
ronflement:(m) いびき
sonore:(形) よく響く
se pencha:(3単単純過去)<se pencher
se pencher:(pr) 身をかがめる
pencher:[パンシェ](自) 傾いている
Le tableau penche un peu. /この絵は少し傾いている.
pencher:[パンシェ](他) 傾ける、かしげる
posa:(3単単純過去) <poser (他) 置く
目的格補語は、ずっとうしろのportefeuille
poser doucement un portefeuille / そっと書類入れを置く
poser doucement sur le ventre un portefeuille
そっとおなかの上に書類入れを置く
poser doucement, dans ses mains sur le ventre
そっと書類入れを手におさめてお腹の上に置く
croisées:(形p.passé) 交差させた、組んだ
ampleur:(f) (衣服の)ゆったりしていること、ゆとり
ventre:[ヴァントル](m) 腹、おなか
portefeuille:(m) 札入れ、財布、書類入れ
cuir:(m) 皮、革、皮革
en cuir / 皮でできた、 serviette en cuir / 皮かばん
———————≪解釈≫——————————————
旦那さんは「書類ケースをお腹の上にのせた」のですが
誰のお腹の上なのか、書かれていません.ただヒントは
夫人によりかかって、お腹の上に置いた、ということは、
それは夫人の広々としたおなかだったと解釈するのがい
いと思います.
この箇所が仏検で「和訳せよ」と出題されたら、殺生な
問題だと思います.私が採点者なら夫人のおなかでも旦
那のお腹でもOKにしますが、試験って時の運も左右し
ますからね.